■マコの傷跡■

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chapter 21



~ chapter 21 “養女” ~



父と兄の居る家に戻って生活をしていたある日の朝、
学校に行こうと制服を着て下に降りると父が私を呼んだ。

伯母の知り合いに子供の居ない夫婦が居るという。
そしてその夫婦が、私を養女にどうかと言っているのだと言う。
「お前にその気はあるか?」と父が私に聞いた。

“私を養女に・・・・。”

ショックだった。私はこの家に居たら邪魔なのだと思った。
お金がかかるから?面倒見てくれる人が居ないと生きれないから?
お父さん1人では、私の面倒を見切れないから?
私は他の家の娘にならなくちゃいけないの?
「少し考えてみる。」と妙に冷静に答えていたが頭の中はパニックだった。
その証拠に、通学途中の駅で友達に会った途端、気持ちが緩んで涙があふれた。

“私はこの家に居てはいけないのだ。
私はいらないのだ。邪魔なのだ。
知らない夫婦の所へ行かなければいけないのだ・・・。”

養女になるという事はどういう事か考えた。
高校生の娘を養女に、と言うからには純粋に子供が欲しい訳ではないだろう。
そうであればもっと幼い子供を求めるはずだ。
それは老後を看て欲しいという事ではないだろうか。
知らない夫婦を今後 親として、老後も面倒を見る・・・・。
私にそれが出来るだろうか。
そうしたら将来、看たくても自分の本当の親を看る事は出来なくなるのだろうか。
それに、もしも結婚したいと思う人が一人っ子だったら?長男だったら?
私が将来、面倒を見るのはこれから親になる夫婦だ。
それが叶う相手を、お見合いでもして見つけることになるのだろうか。
私はまだ彼氏すら居ないのに自分の結婚について必死で考えた。
それはあまりにも重過ぎた。
そんな先の事まで考えても答えが見えるはずがなかった。

その結果、なんとか出した答えはこうだった。
「その人達に会ってみたい。」

父と伯母に連れられ、伯母の知り合い夫婦の家に行った。
夫婦は2人とも優しそうでいい人そうだった。
“でも・・・・。”会ってみても決心はつかなかった。
決心のつかない状態で、そんな重要な事を決めてはいけないと思った。
それでも返事をしなければならなかった。

「会ってみて、いい人達だなぁとは思ったけど
まだこの年で、そんな将来の先の事まで考えられないから
出来れば今のままで居たいんだけど・・・・・。
私は、この家に居ちゃ、だめなの?」

これを父に言うのにどれだけ勇気が要ったか。
父は「お前がここに居たいなら、今まで通り居てもいいんだよ」と言った。
とりあえずホッとした。それでも私は傷ついたままだった。


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